吉川(晃司)さんが、会社に来た!

19時過ぎ、会社のデスクでもくもくと精算してたら、吉川(晃司)さんのマネージャーさんが通りかかり「たかのさん、どうも!」と声をかけてくださった。ああ、7/10(土)公開の、藤沢周平原作の映画『必死剣 鳥刺し』に吉川さん出てたんだ、今日は舞台挨拶か! と思い、せっかく吉川さんが自分の勤めてる会社に足を運んでくださっているのだから、東映のファン代表(?)として「舞台挨拶、がんばってください!」とエールを送るべく、ご挨拶に行くべきか、行かないべきかで、ウンウン迷いつつも、取り急ぎトイレへ。

ちょうど、『キューバでアミーゴ!』の文庫が届いたところだったので、吉川さんに文庫をお渡ししようかと思ったのだけど、朝から一度も化粧直しをしていなかったので、きれいに見せたいとかそういうやましい気持ちではなく、あんまりぼろぼろのヨレヨレで伺うと、(俺のファン、疲れ果てた残業OLかよ‥‥)と思われて、吉川さんを元気づけるどころか、へこませてしまうと思ったので。

OLっぽく(?)、一応、だっと化粧を直し、キャストの皆さんが集まっている会議室へ。打合せ中だったので引き返そうとしたら、マネージャーさんが「もう終わりますから、会ってってくださいよ」と言ってくださったので、着物姿の凛々しい殿の前へ歩み寄る。

「おお!」と言ってくださる優しい吉川さん。「おつかれさまです! これ、あさって発売なんですけど、よかったら‥‥」と言いつつ、「はは〜っ、御意〜」という気持ちで本をお渡しする。「ありがとう。お、キューバ! 行ってみたいんだよね〜」となかなか殿の食いつきがよかったので、「キューバ、凄まじいラテンワールドで、超面白いですよ〜! 私が生まれて初めて、自分のこと、根暗か!? と思わされたくらい、ハイテンションな国ですから! 食堂入ったら、ウェイトレスがくるくる回って、踊りながら給仕してくるんですよ!」とテンション高くまくしたてる。

「へ〜、そんな明るいんだ〜」と吉川さん。「もう、子どもからお年寄りまで、みんな箸が転がってもおかしい年頃だらけで、国を挙げての躁状態というか。で、サルサ踊ったら恋に落ちちゃうんで、人生で3、4回、結婚するのは当たり前、女はみな五月みどり、男はみな火野正平、みたいな感じで、華やかな恋愛歴なんですよ〜!」

「いいね〜、キューバ。それって、子どもがいても?」「社会主義なんで、みんな食うには困らない、ちょい貧乏なところで平等になってるんで、親が離婚したからウチが貧乏になった、みたいなことが一切ないんですよ」。吉川さんが「1」応えると、「10」返す方式で、マシンガントークを炸裂させてしまう、舞い上がりっぱなしのワタシ。

「なるほどね〜。誰と結婚しても、格差が殆どないんだ」と吉川さん。「革命で、貧富の差、人種差別、男女差別を撤廃したものの、同性愛だけはダメで、昔はゲイの人を強制労働所送りにしてたらしいですが、今じゃ“同性愛先進国”って言われてて、性同一性障害の手術も国がタダでやってくれるそうです」

「え、じゃあさ、手術受けてきたの?」と笑いながら言う吉川さん。思わず目がテンになり、「へ!? あの、もともとどっちで、どっちに手術したって意味です?」と聞き返してしまう。私の設定がもともと女で、男になる手術をしたのに、この程度の“男らしいオンナ”にしかなれなかったってこと!? それとも、私の設定がもともと男で、女になる手術をしたのに、“この程度のオンナ”にしかなれなかったってこと!? 鳩が豆鉄砲食らったような顔になっている私を見て、吉川さんは「いや、その、クックッ!」なんてイタズラッ子のように笑っている。

吉川さんにお会いするのは、何度目だろう。06年8月公開の『劇場版 仮面ライダーカブト』の主題歌で舞台挨拶に来られたときに挨拶に行ったのが初めてで、そのとき『ガンジス河でバタフライ』を読んでくださっていた事実を知って驚き、『SENPO』の舞台、ライブに3回、こないだ仮面ライダーW』挿入歌、『Nobody's Perfect』のPV 撮影に‥‥7回目だ! 今じゃジョーダン(?)まで言われるようになって、ありがたや〜。

最後、白髪がメッシュレベルを超え、ロマンスグレーになりかけている吉川さんに、「ちなみに吉川さん、髪染めないんですか」と気になっていたことを聞いてしまう。「いや〜どうしようかな〜と思ってるとこなんだよね。これ(白髪)、地毛なんだよ」と髪を触る吉川さん。思わず声を荒げ、「今もカッコイイですけど、やっぱ、染めた方がいいですって!」と地団駄を踏みながら言ったら、「そう? 分かった、分かった。ほら、(舞台挨拶)始まるよ」といなされたので、「では、頑張ってください!」と慌てて退散。

もう少し違ういい方をした方がよかったかな‥‥と思いつつ、フジテレビの連ドラ『素直になれなくて』を見た人たちから、「吉川晃司、老けたね〜」と言われまくったせいで、こんなにかっこよく年を重ねているのに、年齢以上に(というか、必要以上に)ふけて見えるのはどうかと凄く気になっていたので、思いの丈を伝えることができてよかった‥‥。

吉川さんに嫌われても、出入り禁止(?)になってもかまわないと思いつつも、言わずにはおれなかった。人が後悔するのは、自分がしなかったことに対してだけ。やって後悔することはなくとも(たとえ後悔することがあったとしても、やるだけのことはやった! と自分で納得できるすがすがしさ!)、やらなくて後悔するときの後悔の度合いの深さよ! 私は自分がしなかったことで、後悔だけはしたくない。

吉川さんにお会いすると、私は吉川さんを好きになった15歳のときの、まだ世の中のことをぜんぜんよくわかってなくて、なのに世界はとてつもなくデカくて、なにをどうしてよいものか分からないものの、目の前に広がる未来に期待に胸を膨らませていた頃の自分に戻ることができる。いつお会いしても、初心忘るべからず、の気持ちを思い出させてもらえる。

とにかく、どうぞ、いつまでもお元気で‥‥。私が60歳になったときには、66歳になってる吉川さんを、ライブでノリノリで応援できるような未来が来ることを願うばかり!

文庫『キューバでアミーゴ!』完成!



 宅配便で『キューバでアミーゴ!』(7月7日発売・幻冬舎文庫)が届いた!

文庫化にあたって、久しぶりに読み返したところ、キューバで出会ったアミーゴたちがなつかしくてたまらず、思わず涙がチョチョ切れてしまい‥‥、こんなによき出会いに恵まれた旅だったからこそ、本の最終形である文庫をもっといい本にしたい! と気合いが入ったのが半年前のこと。

いつも文庫化のときは、悔いが残らないよう結構細かく手を入れるのだけど、今回は特に、かなり時間をかけて加筆修正し、一冊の本を書いたくらい大変な作業だったので、出来上がった文庫を手に感激もひとしお。まるでジェットコースターに乗ったような、上がったり下がったりを繰り返し、いろんな思いをしたキューバ旅だったけれど、やっぱり忘れられない国と人びと。ああ、たくさんの人に、キューバの魅力が伝わりますよう‥‥!

中身をブラッシュアップし、カバーの写真も変更してお色直ししたこともあって、自分で見ても新しい本のようで、なんだか新鮮! 今回も装丁は、『モンキームーンの輝く夜に』『ダライ・ラマに恋して』『淀川でバタフライ』の文庫や、『恋する旅人 〜さすらいOLインド編』『銀座OL 世界をゆく!』のDVD、全作品をデザインしてくださっている、デザイナーの 松 昭教さん(ブックウォール)が手がけてくださって、有難い限り! 松さん、いつもすてきなデザインをありがとうございます〜!!

そんなこんなで、単行本よりもさらにキューバへの思いを伝えられる本になったんじゃないかと思うので、機会があれば、ぜひキューバに旅立ってもらいたい気持ちでいっぱい。
次に何が起きるのか、まったく予測不可能な、あのラテンワールドを体感してもらべく、そのときはぜひ、ツアーでなく、アミーゴに出会うゆとりのある自由旅行で!

いつかチャンスが訪れてキューバに旅立つことになった人が、ラテンなアミーゴとの出会いに満ちた、良き旅になることを祈りつつ‥‥!


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